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2011年05月10日

奥穂高岳3,190m残雪期

午前4時、テントのフライを開けるまでもなく外はまだ暗いと分った。

静かに冷えきった涸沢カールのテン場。

蒼い空気。

山独特の静けさ。

珈琲を沸かすストーブの炎の音。

ベンチレーターから目指す白出のコルを見上げてみる。

まだ登っている者はいない様だ。

そう、これからこの涸沢カールから白出のコルまで直登し奥穂高ピークを目指すのだ。

当初、の計画では今回の涸沢カールは天候や雪崩の事もあって中止としていたのだが、ココまで来てしまっていた。

助言をくれた先輩の言う通り天候は晴れ。無風。

もうしばらくすれば足下が見える位には明るくなるであろう。

前日、松本で買っておいたラーメンを作り暖まる。

午前5時、常念山脈の向うが少し明るくなると同時にお嬢に「行って来ます」と心の中でつぶやいた。

Climb ON ! 直登開始!

前日のトレースもザラメ雪も全てがアイスへと冷え固まりクランポンの爪の感触が良く伝わる。
奥穂高岳3,190m残雪期


歩幅の合わないトレースなんて疲れるだけだ。

ワタシは自分のステップを一歩一歩刻んで行く。

登っても登っても一向に近づかない気がする。
奥穂高岳3,190m残雪期


ようやくザイテングラートに取り付いた。

ここまで登ればようやく半分の地点。

テン場を見下ろし、ここで滑ったらアックスが刺さらないかもと肝に命じる。
奥穂高岳3,190m残雪期


前穂高もザイテングラートから見ると迫力だ。

奥穂高岳3,190m残雪期


常念の向うから朝日が差し込む。

遥か眼下のテン場。

きっと、見られてる。

そんな気がする。
奥穂高岳3,190m残雪期


空は真っ青で地面は真っ白。

青と白の世界。

コルまであと少し。

急登だ。

ダガーポジションを取り一気に駆け上がった。
奥穂高岳3,190m残雪期



午前7時過ぎ。

白出のコルからテン場を見下ろし両手を上げてここまで来たぞと誰かに合図を送る。

この登りは大変だった。

奥穂高岳3,190m残雪期



稜線は相変わらず飛騨側から風が吹いていて鼻が取れそうな痛さだ。

ハイドレーションの水もホース内でシャーベット状に凍って行く。

さて本番だ。

岩と雪と氷のミックスクライミングだ。

夏場とは足の置き位置もホールドもその感覚も違う。

アックスを氷に突き刺しムーヴ。

滑れば飛騨側に滑落。

こんなエキサイティングな感覚は他には無い。

風は痛く突き刺さるが素晴らしく天気が良い。

何となく残ってるクランポンの爪痕をたどりジャンダルムを目視したなら足早に登頂である。

奥穂高岳3,190m残雪期

【2011.5/5奥穂高岳登頂】

奥穂高岳3,190m残雪期

【吊り尾根から前穂稜線】


奥穂高岳3,190m残雪期

【馬の背〜ジャンダルム稜線】


奥穂高岳3,190m残雪期

【涸沢岳と槍ヶ岳】


奥穂高岳3,190m残雪期

【槍・穂高主稜線】


奥穂高岳3,190m残雪期

【岳沢〜上高地】今日はあそこまで戻るんだ。

足早に白出のコルへ戻るとかなりの人が登り始めていた。

ちょっとルートを外し一気にシリセードでテン場まで下る。

8:30テン場到着。

予定よりも随分と早い帰りにお嬢も驚いていたがコルからの戻りは20分もかからなかった気がする。

のんびりテントを片付けたならば魂のカケラをこの場の残して上高地へと下山開始!

そして平湯で仲間との別れ。

それぞれの生活へと戻るのである。

また山に行く時までしばしのお別れだ。

そんな今年のGWであった。


Fine






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Posted by jun(槍隊放題) at 02:39│Comments(10)
この記事へのコメント
登頂、お疲れさまでおめでとうございまぐぬぬ。
僕も絶景見たかったです。

なんかジャンへのトレースが見えるのですが・・・
変態はいるのですねぇ、しみじみ。
Posted by カワム at 2011年05月10日 06:22
霞の偵察のためにわざわざ対岸までお上がりになるとは、
いやはや畏れ入谷の鬼子母神。
で、薄いブルーに凍てついた世界の果てから
こうして見せていただきましたジャンの黒いこと、黒いこと。
雪がある時のジャン越えとキレット刃渡りとか、
これからも楽しそうなアトラクションが目白押しのようで
僕はケツがむずむずいたしますですよ、きえ〜。
Posted by ちまるぷ at 2011年05月10日 15:40
まぁ・・・何とも、エキサイティングな登山ですね~
爺には到底無理な山旅ですけど・・・
ヒャ~!かっちょいいですな~年甲斐もなく憧れます。
シビレて涙チョチョギレル画像ありがとうございます!
でも、くれぐれも無茶はしないように!お願いしますね。
Posted by チャイ at 2011年05月10日 20:07
うぐぐぐぐ、見える景色が違うよ!
降りてきた時、待ってた自分まで嬉しくなるような、
そんないいカオしてましたお☆
雪の消えてる季節になったら行ってみたいなぁ
Posted by わだっち at 2011年05月11日 21:11
20分? junくんも足早すぎw
今更だけど 行きたかったなぁー


しかしジャンへのびてるトレースはどこまで続いているんだろう。
Posted by junkjewel at 2011年05月16日 16:58
カワムさん
横尾は運命の交差路
それぞれの思いが交差する場所なんですな〜
あの日、奥穂ピークから槍穂主稜線をみながら今頃槍のピークにいるんだな...と勝手に想像して楽しんでましたよ。

ジャンダルム大した事無いです。
行くか行かないかの世界ですから...
Posted by jun(槍隊放題)jun(槍隊放題) at 2011年05月17日 20:22
ちまるぷまるちぷる先生

ええ、当然「霞」を上から見下ろしてやりましたよ!
あのギザギザ実にけしからん!

しかし、ジャンダルムのリッジは残雪期の方が簡単に歩けそうですが、やはり飛騨側からの突風が吹いたら一発ですね。
ぐぬぬっ!
Posted by jun(槍隊放題)jun(槍隊放題) at 2011年05月17日 20:29
チャイ先輩

何言ってるんですか?
来年、やるんですよ?
北ア最高峰で海藻サラダ。
やるんでしょ?
ええ、今回はその為の下見ですよ〜!
Posted by jun(槍隊放題)jun(槍隊放題) at 2011年05月17日 20:33
わだっち嬢

確かに景色が違いますね〜
しかしながら涸沢カールの360°囲まれた擂鉢状のテン場はは最高でしたね!
次回は緑いっぱいでお花が咲いてるカールも良さそうですね...
と写真集を見ながら思ってるのであります。
Posted by jun(槍隊放題)jun(槍隊放題) at 2011年05月17日 20:38
ヤムさん、
20分と言うのは白出のコルからテン場までシリセードで帰って来た時間であります。
まるで「蜘蛛の糸」の様に登って来る登山者をさけながらですので本気でシリセードしたら5分かからないかもw

今回は上手く日程調整が行きませんでしたが次回は是非ともご一緒したいのであります。
ええ、用意しておいたモッツァレラは自宅で頂きますよ。
Posted by jun(槍隊放題)jun(槍隊放題) at 2011年05月17日 20:44
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